美しいものだけが君の瞳に写り、美しい言葉だけが君の耳に入ればいいのに。
でもそうしたら、僕は君の傍にいられなくなってしまうね。
嘘つきは嫌いよ、と泣いた。
ごめんね、と笑った君は寂しそうで、きれいで、そしてやっぱりどこまでも嘘つきだった。
守ってほしいなんて私がいつ言ったの。
傷つくあなたを見て傷つく私は本当に守られていると思っているの。
責めてほしかった。泣いて怒って、恨んで、詰って、見捨ててほしかった。
だけど強くて悲しい君は、そうはしなかった。
ある月のきれいな夜のことでした。暗闇の中にはやはり暗闇だけがあったのです。
けれど微かな月明かりに照らされて、私たちは出会いました。
飛べない翼に意味はないと言ってその翼を引きちぎる。
強いから痛々しい君をそれ以上見ていられなくて、私は舞い散った羽を拾い集めた。
くだらない、と投げ捨てたものの中に、大切なものは入っていませんでしたか?
それとも、それに気付く心さえ捨ててしまいましたか?
君はいつも僕の手を引いてくれたね。こっちだよ、そっちじゃないよ、って。
でも足手まといになるくらいなら、僕からこの手を離すよ。
華やかなパーティー、華やかなドレス、華やかな食事、華やかな人々。
いつか埋もれて息もできずに、死んでいく。
子供のころにした約束のように、小指と小指を絡めてあの唄をうたう。
大人になった僕らは、この約束を守れているだろうか。
君は僕を信じるという。僕は僕を信じないという。
だったらあなたを信じるわたしを信じてと君は言う。
なんの他意もないない風を装って手を繋ぐことも、抱きしめることもできるけど、
その唇に触れることも首筋に口付けることも、できない。
新しいものを探してそのために生きていけるほど、強くはない。
過去を振り返りながらしか、生きられない。
どこをさがしたら、あいをみつけられますか。
みつけられたとして、どうしたらそれがあいだとわかるのですか。
上っ面だけの優しさや、安っぽい正義はいくらでも振り撒けいてきたし今も振り撒ける。
だけど、あなたには見せたくない。そんな意味を持たないものは。
あなたが今、きれいごとでもいいから安心できる言葉を欲していたとしても、
この口はあたなに本当のことしか語りたくないのです。
抱きしめて、抱きしめることしかできなかった。
だけど、君が抱きしめ返してきたから、これでもいいか、なんて思った。
やめて、癒そうとしないで。傷ついたままでいたいの。
そうすれば一人で生きていけるの。だから、お願い、やめてよ。
この感情がなにか、本当はとっくに気付いてる。知ってる。心が、求めてる。
だけど怖くて蓋を開けれずにいる。
一人にしないよと君に言っておきながら、俺だって、本当は俺が、
一人になりたくなかっただけなんだ。
傷付いた君すらきれいに見えるのは、きっと、
これまで君が負ってきた傷が全部大切なものを守るためのものだから、だね。
冷えた体、右手にその覚悟の分だけ重い銃を握り締めて、血の滴る指先を眺めながら考える。
俺の最期はどんなだろうか。
嬉しいからなのか、悲しいからなのか、怒っているからなのか。
わからないなら、その零れ落ちる水滴に聞きなさい。
ずっと、ほしくてほしくて、ほしくて。
どんなに馬鹿でも、格好悪くても、それだけを求めてたんだよ。
どんなに長くてキツい坂道だって、その先にお前がいると思えば踏ん張れる。
立ち止まってなんかいられない。
君は私を助けることで自分が救われたいのかもしれないけど、私は助けられてなんかやらないよ。
だって私が君を救うんだから
どうしても叶えたい夢がある。そのためになにかを切り捨てることは悪いことだとは思わない。
でも、心が苦しくなるのは止められない。
わかってるふりをしてきた。本当はなにもわかっていない、ただの子供だったのに。
そしてそのしわ寄せが今、目の前に広がる光景なのか。
絶望でうずくまる私の前に、影が落ちた。
顔を上げると、誰かが私の前に立って手を差し伸べてくれてるんだけど、その人の顔は逆光で見えなかった。
伸ばした手が届くかどうかは実際に伸ばしてみなければわからないことだよ。
わからない結果に怯えているばかりじゃ、なにもできなくなってしまうよ。